サンマ-4
サンマだけじゃなくて2年からクラスが一緒になったやつらからも。
当時は高校生にもなってマンガが好き、アニメが好き(特にアニメ)って人間は、人間扱いされない風潮があった。
だから俺みたいな人間は、モテたくて仕方なくて格好つける男子高生からは汚物のように見えたのだろう。
当時はバイク、バンド、野球部がモテた。
レベッカのフレンズが流行っていた時代。
ジョンナムすらバイクに乗っていた。
サンマ1~3を書いていて心の中が整理出来た。
サンマの行動は「尾崎豊から探して」で書いた俺にひたすら攻撃してきた人間の行動にそっくりだ。
サンマは恐らく境界性パーソナリティー障害だったんだろう。
そう言えば詳しいことは知らないがサンマは母親が居なかった。
これが原因になる事がある(だからと言って皆がなる訳ではない)。
数々のエピソードを並べるとそうとしか思えない。
普通に考えたら散々、バカにしていた俺と一緒に登校したりする必要は無いだろう。
見捨てられ不安から支配下に置く人間が欲しかったんだ。
迷惑な話だ。
上記の人間が対人操作して、俺の事を知りもしないくせに俺を悪人と思い込んで不遜な態度を取ってきたやつも明石家さんまに似ていたのは、たちの悪いジョークだよ。
社会人になって何年目か、地元駅を出るとたまたまジョンナムが居て
「サンマのお父さんが亡くなったって。」
とあの大げさな言い方で伝えてきた。
サンマだけではなくそこに来るであろう高校の同級生にも会いたくない俺は、罪悪感は感じつつも
「俺は知らなかったことにしてくれ。」
とジョンナムに頼んだ。
今なら適当に返事して、別件が有って行けなかったとでも言えるけど。
サンマの父親は中学の下校中に一度だけ見たことが有って、サンマに口髭を生やしたような顔して原付をブンブン鳴らして俺たちをからかって走り去っていった。
いかにも遊び人って感じに見えた。中学生がイメージする遊び人。
サンマを最後に見たのは地元のドン・キホーテでだった。20代後半の頃だったと思う。
これまたジョンナムと居た俺が
「あれサンマじゃないか?」
とジョンナムに言った。
ジョンナムは否定していたが、まず間違いない。ジョンナムは、すぐなんでも否定するのだ。
サンマは俺たちが知らない男と二人で靴を見ていて
「安いねぇ――!!」
とオーバーな態度で言っていた。サンマはどこかオバサンみたいなしゃべり方をするのだ。
サンマは少し禿げていた。
モテ男のサンマが禿げていて結婚もしていなさそうな風体だったので、高校時代のコンプレックスがまだ取れていない俺は少し救われた気がした。
3年前、卒業後初めて行われた中学の同窓会にサンマの姿は無かった。
終わり
サンマ-3
今思えばサンマが水泳部って笑える。
俺とジョンナムは文芸同好会。活動実績ほぼ無し。
そして同じ中学のギョロメは柔道部に入った。
この高校には同じ中学から男女合わせて二十人くらい入学している。
サンマはギョロメと一緒に下校するようになった。
体育会系どうしだから時間が合ったのだろう。
ある日突然、サンマがギョロメをボロクソに言うようになった。
理由はギョロメが柔道部を辞めて一緒に帰る事が無くなったから。
相変わらず自分勝手な人間だ。ギョロメの勝手だろ。
あれ?これってどこかで見たような風景だ。大人になってから……。
思い返せば中学生時代、検診を受けた結果、虫歯が有った同級生何人かで歯医者に通ったことがある。
その中にサンマも居た。
通った先は土日もやっているからと日本橋東急百貨店の中に有った歯科医院。
治療が終わった後は鉄道模型売り場とかを見てから帰った。半分、レジャー気分。
当然、各個人、治療が終わるタイミングが違い、俺はサンマより早く終わったので次からは行かないと言った。
するとサンマはここでも激昂し、ずるいとか無責任とか罵声を浴びた。
ああ、サンマは自分が支配できる人間が欲しかったんだな。評価していない好きでもない人間でも自分の言うことを聞く人間を置いておきたかったんだ。
つづく
サンマ-2
元々、大して偏差値の高くない、いや低い高校を選んで楽にクリアした感じだ。
最悪な事に俺とサンマは同じクラスだった。
サンマに
「そんな予感したんだよなぁ。」
と嫌そうに言われた。俺だって嫌だよ。
そして何故か、上記、三人と後、一人くらい居たかな?で、地元駅で待ち合わせて通学することになった。
俺はサンマが嫌だし、サンマも俺に文句ばかり言う癖になんでそうなるんだろう?
しかも妙に集合時間が早い。学校に着くのが出席を取る時間の30分くらい前になる計算。
社会人になった今なら特に早いとは感じないが当時は眠くて仕方がない高校生。嫌だったが無理に付き合わされた。
まずジョンナムが脱落。ジョンナムは家が商売をやっていて親が殆ど家に居ないのでダラしないのだ。
俺もギリギリか少し遅れていく事が殆ど。するとサンマは怒り狂う。なら先に一人で行けば良いのに。
ある日たまたま早く起きられて家を出たら、集合時間がやけに早い理由が分かった。
サンマが彼女を自転車の後ろに乗せて走ってた。
要はサンマの彼女の通学時間に合わせていたのだ。
どこまで自分勝手な男なんだろう。
バカらしい。集合して通学はいつの間にか自然消滅した。
ちなみにサンマはマメで女にはモテた。
不良には近づかない。
自分より立場が弱いやつには威張る。
それなりに価値があるやつとは仲良くする。
そういう男だった。
つづく
サンマ-1
だからここではサンマと呼ぶ。
こいつが凄く嫌な奴だったので、しばらく、20代くらいまではテレビに明石家さんまが映るのが嫌だった。
家の方向が途中まで一緒だったのでサンマと俺と家が駄菓子屋のI塚と下校していた。
サンマは俺とかI塚のようにあんまり言い返さない人間には支配的な態度を取るやつだった。
下校時、突然、「はい、ここでストップ!良いって言うまで動いちゃダメ!!」と言いだし、なぜか俺たちも逆らえなくて下校にやたら時間がかかった。
再放送の必殺シリーズを観たかったのに、これの所為でオープニングに待ちあわなくてイライラした。
三年生になりクラスが変わったので解放された。
だが、運の悪いことに受験する高校が一緒だった。
高校受験の願書を出しに行く時、我々は校庭に志望高ごとに並ばされた。
そして願書が入った封筒を渡され、皆で駅に向かった。
駅で電車が来るとサンマが後続の同級生を置いて乗ろうとしたので俺が
「みんなで一緒に行かないとダメなんじゃないの?」
と言うと
「じゃ、なんで、これ(願書)を一人一人に渡したの?!」
とムキになって噛みついてきた。
サンマはどうやら誰よりも早く願書を出すことに燃えていたようだった。
俺は校庭に並んだ時に一番前(五十音順の先頭)のAに先生が何か別に渡していたのを見たのだが、気圧されて何も言えなかった。
高校の最寄り駅に着き、前と後ろどちらの駅出口から行くかで、また、サンマと揉めた。
俺はジョンナムと下見に行った際に母親から商船大学の方からと聞いてそっち側から行ったのだがサンマは逆だと言う。
え?でも、下見の時はこっちから行ったしと言うとサンマは切れて
「もう、いい!こいつら置いていこう!!」
と俺とジョンナムを置いて、誰だったか覚えていないが別の奴と急いで向かって行った。
で、ゆっくり向かった俺たちが着くとサンマがまた噛みついてきた
「全員揃わないと願書出せない!お前のせいで一番に出せなかったじゃないか!!」
流石に俺も切れた
「駅で他の生徒を置いて行ったのはお前だろ!!だから待てと言ったじゃないか!!」
本当はぶん殴りたかったが、そんなことをしたら高校に行けなくなると思って我慢した。
駅の出口は結果、サンマの主張が正解だったが問題はそこではない。
つづく